家庭用などで調味する場合は、見掛けの一つまみ、スプーン1杯などが基準となり、実質は容積で計られているため、かさ密度の違う塩では間違いやすく、塩自体の味の特性と誤解される例が多い。スプーン1杯は塩の種類によって約2倍の差があることはよく理解されていない。また塩の水分は常に吸湿、放湿を繰り返しており、水分が増加すると塩は嵩張ってくる。例えば食塩は生産直後の乾燥状態でかさ密度1.4g/mlだが、ユーザー手元で使用するときは0.2%程度の水分になり、かさ密度は1.2g/ml程度になってしまう。 5.組成 家庭用小物としては、中粒径のものが主体で、塩化ナトリウムとして99.7%以上の精製塩級、99%以上の食塩級、95%以上の並塩級、95%以下の苦汁添加塩級がある。このランク区分は基本的に分離機の脱水の程度、乾燥の有無によって決まる。採かんが膜法か塩田かは関係がない。水分(にがり分)をどこまで残すかで決まる。大正時代まで塩化ナトリウム70%台だったのは、煮詰め過程の石膏の分離が不十分だったこと、塩の歩留まりをよくするために煮詰めを進めすぎていたこと、分離機がなく自然脱水だったことなどによる。昔は「あく抜き塩」といって、高級料理店では塩を溶かして煮立て、卵の殻を入れてにがり分を除き、結晶した塩を皿で受けて採る方法が秘伝としてあった。この操作はすでに現在のフレーク塩(あらしお)であらかじめ行われていると考えて良い。現在は操作が改善されてむしろ95%以下の塩を作るには、標準操作ではできないから、分離された苦汁を改めて添加する方法がとられる。また現在市販されている苦汁添加塩には、塩に苦汁を添加するか、溶解後再度せんごうして苦汁を添加したものが多い。しかし日本のように苦汁の入った塩を珍重するのは日本だけで他国にはその例はあまりない。これは昭和50年代からの苦汁添加塩業者の宣伝の成果であろう。 各塩種についての分析例を示す。現在国内で市販されている塩種は1000種以上あり、輸入製品を加えると1500種以上になると思われ、それらを網羅して記載することはできない。塩の商品カタログのようなものがあると消費者には便利だがそれも現在ない。表3は乾物基準%(水分以外を100%として表示)で示しているが、高純度塩と苦汁添加塩の組成の差は小さく、栄養的見地、溶解したときの味の面からの差は無視できる程度である。多カリ、多マグ塩はかなり特徴的になる。しかし苦汁添加塩の場合、結晶の表面ににがり分が付着しているから、物性(使い勝手)差が大きく、直接固体でなめたときの味も変わる。物性の差として大きいのはサラサラ性が低下してべたつくこと、そのため分散性が悪い、付着性がよいなどである。 表3 塩の組成の例(乾物基準表示)