選び方、使い方 選び方、使い方
塩味の常識
(2010記載)

塩のソムリエに
チャレンジ(2010記載)


高価な塩が
よい塩ではない


安全な塩を簡単に
見分ける方法


塩味の特徴

塩の上手な選び方

ユーザーのための
塩学入門


塩の賞味期限

漬物に使う塩

駐車場の凍結防止
塩味の常識
1. 塩は百肴の将 (2010記載)

 塩は百肴の将というのは、塩は御馳走の主役であるの意味です。どんな料理でも塩なしでは料理にならない。醤油、みそ、酢などの調味料も塩なしでは味の根幹がなくなる。グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸などのうま味調味料も塩なしでは全く旨味を感じることはできませんが、グルタミン酸ナトリウムの溶液に塩をわずかに入れることで旨味がパッと現れるのを見ると、すべての味の根幹は塩にあることを如実に感じてしまいます。すべての料理で塩がなくなると味がなくなります。これは他の調味料とはその重みが違うことを感じさせてくれます。
 塩は百肴の将、酒は百薬の長といわれます。元は中国の古典に出てくる対句です。酒は百薬の長でと言われていますが、少し飲みすぎると二日酔いになったり、長年飲みすぎると胃や肝臓が悪くなるという心配があります。塩のとり過ぎも最近高血圧の原因になるとして問題になっていますが、酒も塩もおいしいのでほどほどに自制しなければ体に毒ですよということなのかもしれません。
 味には5味があるといいます。塩辛い、甘い、酸っぱい、苦い、旨い、の5味です。これらの味を感じるのは、舌にある味蕾で感じて脳にその刺激を伝えて認知すると習ってきました。しかし塩の場合は味蕾の働きは二の次のようです。塩の血中濃度は一定に保たれていなければ生きていけません。運動や労働で汗をかくと体の塩分が不足し、不足信号が脳に伝われば、塩が欲しくなり、やたらに塩がおいしくなるもので、味蕾でおいしいと感じるものではないらしい。それと同時に、塩味は誠に微妙でちょうど塩濃度がよいとおいしいが、ほんの少し多くても少なくてもおいしくないどころか食べることすらできない。塩は極端な食べすぎも節約もできないものである。しかも塩に対する感度が人によって大きく違う。0.6%食塩水で0.01%変われば十分感じる人と0.1%の変化でもあまり感じない人がある。昔、徳川家康が近習に(一説には春日局とか阿茶局などと言われる)世に最もおいしいものは何かと問うた時、「それは塩にございます」と答えた。世の中で最もまずいものは何かと重ねて問うと「やはり塩にございます」と答えたとの逸話がある。

2. 塩加減が味の決め手 (2010記載)

 塩はすべての料理の味の決め手だということは料理をする人の常識だが、そんなに塩が大事なものだから高価な塩を使えばすごい料理ができるに違いないと考えてしまう人もたくさんいるらしい。その効果を期待してこの塩を使えばどんな料理もおいしくなるという宣伝をする販売者が現れる。その尻馬に乗って宣伝に一役買う料理研究家がレシピを書く。このようにして多くの人がおいしい塩を使って料理をおいしくしようと考えるようになる。
 しかし一番大事なことはどんな塩を使うかではなく、塩加減がきちんとされているかで味が決まるということであり、追加を入れるならば塩の使い方が上手にできたかを入れることになる。1に塩加減、2,3,4、がなくて5に塩使い、6,7,8がなくて9に塩選びなのである。塩加減、塩使いが決まってなくては塩を変えても意味ないし、誰にもその差がわかるような差は出ない。
 塩はそれ自体を食べるものではない。必ず素材があって、調理法があって、それを手助けする調味料がある。素材や調理法に合う塩が必要なのであって、脇役の調味料はいつも主役の素材や調理法への相性で決まるものです。しかも塩味の大部分が醤油、味噌、ソースなどで、塩はそれら調味料の味の基本となる調味料の中の基本調味料です。塩が主役となって舞台で独演することはありません。塩を舐めた味の感触で塩の評価を決める人がいますがこれも誤りのもとです。塩を舐めた味はそれぞれに異なるが、塩を舐めた味が料理の中で生きる例は多くはありません。基本的には舐めた味と料理の味は違うものです。舐めた味は物理的性質、例えば、結晶の形状、硬さや溶けやすさ、粒の大きさなどの物理的性質と塩の表面付着液例えば、水分や塩化マグネシウムなどの「にがり」分の多さ、混合された食材、ハーブ、固結防止剤、各種塩類、食品添加物、等の混入物によって変わる。無加工の塩では、水分、にがり分、塩つぶの形、などで、見かけの感じ、使い勝手、味などの面で変わってきます。そして塩を作るものはその微妙な差に懸命になって特徴を出すことになる。食の世界では分かるか分からないか微妙な味の差を珍重することはいろいろな食材で起こることである。

 業務用の塩では、塩の種類が変わると微妙に味の変化を生じます。これは同じレシピで正確に作られているようなときには塩の微妙な差がわかるためです。しかし、通常の料理では同一レシピでも塩の量や素材などが一定にできないので、塩加減や塩使い、相手の素材の変化などに隠れてしまって塩の差は見えなくなるのが普通です。塩の味とそれ以外の味を個別に解析的にわかるような味覚を人間は持っていないのです。

3. 丸い塩と角のある塩 (2010記載)

 おいしい塩は丸い塩、まずい塩は角のある塩、といわれます。塩を舐めたとき、ピリッとくる塩辛さがあるものは角がある。ピリッくる塩辛さは塩化ナトリウムの味です。精製塩などで強く感じます。岩塩では溶ける速度が遅くやや甘く感じますが、粉にすると溶け方が速くなりピリッとする塩角が出てきます。「にがり」やグルタミン酸ソーダなど結晶表面に薄膜を作るものが入ると表面に塩化ナトリウムが露出してないので塩角を感じません。このような塩化ナトリウムをなにかでくるんだ形になった塩は丸みのある味といわれます。しかし表面に薄膜を作るものは水ものにすると分散して味の効果は非常に薄くなります。塩を料理に使うとき、特に煮物、椀物、や立て塩で処理する等の水分の多いものでは表面が溶けてしまって塩角を感じることもなく、塩角の有無は関係がなくなります。結晶表面の「にがり」の薄膜は分散してしまって感じることができません。
 塩濃度が高すぎるときも強烈な塩の刺激があり、塩角があるという場合があります。塩加減が濃すぎるときに塩に角があるという表現をすることがありますが、塩の嵩密度が違うとき、重い塩は同量入れたつもりでもたくさんの塩が入るため塩濃度が高くなるので、角のある塩だという表現をすることがあります。また漬物などで味がなれていないときにも、塩に角があるという場合があります。