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塩のミネラル成分(2009年6月記載)
1) ミネラルの表示は禁止、栄養成分表示で正しく記載する。
 塩の成分表示にミネラルという言葉は使えなくなりました。塩の主成分は塩化ナトリウムです。ナトリウムは代表的ミネラルです。「ミネラルを含む」と表現したとき、主成分が塩化ナトリウムですから当然ミネラルは多いのです。塩以外のミネラルなどの表現の工夫をして無理にミネラルの言葉を使うと誤解を受けやすく、ときにミネラル入り、ミネラルたっぷり、などと書くことで、あたかもその塩だけが健康によい塩であるという誤認をさせるための戦略として使われるなど、悪用されることもあるためミネラルという言葉を使うことが禁止されました。その代りミネラルの成分を客観的に表すため、健康増進法で定める栄養成分表示によって成分を記載することとなりました。
2) ミネラル成分の表示方法
 健康増進法で定める表記に従います。最初に必ず、最初にエネルギ−、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム5項目を書きます。塩の場合最初の4項は通常0ですから4項一括して0と書くことができますし、分析の誤差が炭水化物に集まるため炭水化物が当然入ってないにもかかわらず0となった場合にも0と記載することになります。ナトリウムは当然入りますが、その次に表示したい指定された無機質(厚労省が指定したナトリウム以外のミネラル)を書き、さらにそのほかの成分を書きたい場合は線で区分してそれ以外の成分を書きます。塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなど化合物名で書く場合も区分された線の後に書くことになります。

栄養成分表示100g当たり
エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物 0
ナトリウム 37g
マグネシウム280mg
カルシウム 170mg
カリウム 150mg
塩化ナトリウム 94g
 
 
3) ミネラルの定義
 

 一般的には広くは無機物の総称で、有機物のH,O,C,N以外をいいます。しかし塩の表示の場合は厚労省が定める健康上有意義とされる次の12元素をいいます。
Na, K, Ca, Mg, Zn, Cr, Se, Fe, Cu, Mn, I, P

 
 
4) 必須ミネラルとは
   人間が必要とする無機元素を必須ミネラルといいます。現在も研究中です。厚労省が定めた12元素はその中で重要とされたものです。
  人体に必要なミネラル(成人必要量の目安/day)
 

多量に必要

微量必要

必要量不明
Cl
K
Na
P
Ca
Mg
0.7-7g
2- 4g
<10g
900mg
600
300
Fe
Zn
Mn
Cu
I
F
Co
Se
Mo
V
Cr
Ni
12 mg
15 mg
4 mg
2.5 mg
0.1 mg
0.1 mg
0.16 mg
0.13 mg
0.15 mg
0.25 mg
0.29 mg
0.19 mg
S
As
Sn
B
Si
Br
Cd
F
Pb
Li
  和田:機能性栄養素としての微量元素、1994、第一出版から引用
 
5) にがり分が多い塩は健康上意味があるのか
 

 海水の中で特別多いものは塩素、ナトリウムですが、それ以外で塩の主成分として扱われてきたものは、Mg, Ca, K, SO4です。この他、海洋学ではHCO3, Br, H3BO3, F, Sr, まで主成分として扱う例があります。この中で塩素19%が最も多く、フッ素0.0013%が最も少なくなります。それ以外の成分は1ppm(0.0001%)以下しか含まれません。塩化ナトリウム以外の成分は炭酸(HCO3)を除く大部分が「にがり」の中に濃縮されます。

 

海水中の主成分%

Cl
SO4
HCO3
Br
19
2.6
0.14
0.065
Na
Mg
Ca
K
10.5
1.3
0.4
0.38
   これらのミネラルの中で最も多く、健康上意味があるかもしれないのはマグネシウムです。「市販食用塩データブック」の169点の中でマグネシウム1%以上は10点、2%以上は4点しかなく、それも生産量が非常に少ない商品ですから、ほとんどの商品はマグネシウム1%以下です。数量的にみればほとんど0.1%以下になります。塩の成人1人当たり摂取量は10gです。マグネシウムの多い塩を積極的に取ることを考えたとき、塩は大部分が加工食品や調味料から摂取され、家庭用で使うのは1日1g以下ですから、その中の1%でも10mgにしかなりません。例えば他の食材からのマグネシウムでは、スーパーで販売される充填豆腐1丁で200mg、青海苔10gで130mgであることと比較して、いかににがり分が多い塩でもマグネシウム豊富というにはあまりに少ないと思います。また、成人の必要摂取量が1日300mgであり、通常の食事で不足していない状況から、塩からマグネシウムを補給するためにあえてにがり分の多い塩を摂るという意味はないようです。塩の中のにがり分の効用は、ミネラル補給という健康上の理由ではなく、むしろ他の効用として評価すべきものというべきでしょう。
 
6) 塩の中のミネラルが有効に働くことがある
 

 塩にほんとに必要とする微量のミネラルを加えることはしばしば大きな効果を生みます。
世界的にみると甲状腺障害の防止に塩に微量のヨードを加えることが広く行われています。これは海岸から遠く離れたところ、海藻などの海産物をあまり食べる習慣がないところでは、ヨードの不足による甲状腺障害が大きな問題になります。塩はどんな人もほぼ一定量の塩を食べますから、不足する微量ミネラルを塩に加えることはきわめて合理的です。日本の場合海藻類をたくさん食べますから、世界ではまれなヨード過剰の食事をしており、塩にヨードを添加することはありません。
 日本ではしばしば塩に鉄を加えることが行われます。日本の女性には鉄分不足がしばしば問題になるためです。このほか外国では亜鉛を加えたもの、フッ素を加えたものも販売されている例があります。

 
7) 塩のミネラル分はどこから来るのですか(質問)
 

 海水塩の場合、塩化ナトリウム以外の塩のミネラル分はほとんど全部海水成分が濃縮され「にがり」になって海水に付着しているものです。塩の結晶の中には入りません。だから、遠心分離機で「にがり」を分離すると塩化ナトリウム以外のミネラルはなくなります。天日塩製造で塩を洗浄したときも付着したにがり分は流されてなくなります。溶かして再生すればさらにきれいになってにがり分はほぼなくなります。硫酸カルシウムや炭酸塩はスケール(結晶過程にできる湯垢)になって析出します。これは分離して廃棄しますが、管理が悪いと塩に残って汚れた感じになったり異物になったりします。この他、天日塩では塩田の土砂が入る場合があり、釜焚きの場合には釜の錆などが入る例もあります。岩塩の場合は、岩塩と一緒に出てくる鉱物類や土砂が混じるために、塩以外のものが入ります。岩塩に色がついたりする原因にもなります。

 
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