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にがり規格に関する
最近の情報と解説


「にがり」の規格の
審議が進んでいます


粗製海水塩化マグネ
シウムの規格基準の
制定について(解説)


塩のにがり成分(2)

苦汁の話

塩のにがり成分(1)
塩のにがり成分(1)
1.塩の中の苦汁
 苦汁分は塩の結晶には入ることができません。すべて塩の結晶の周りに液体で付着しています。煮詰めすぎたときに塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどが結晶の形で混ざることはあります。液体で付着しているため、塩と苦汁の分離の仕方で塩の中の苦汁の量はかなり大きな幅で調節できます。食塩のように遠心分離機で液体を振り切ると苦汁分は少なくなるし、小規模の平釜でしばしば行われるように籠で自然に落ちるだけにとどめると苦汁分の多い塩になります。これは塩メーカーの商品設計で決まることで、釜の種類や濃縮の仕方で決まるものではありません。
2.苦汁分と塩の味
 苦汁分が多い塩は直接舐めると丸み、甘み、などが増したように感じます。塩の表面が苦汁の苦味で覆われており、まず苦味を感じた後、塩辛味を感じるから塩辛味をマスクしてしまう。舌の味蕾は苦味には早く反応し塩辛味は遅いので塩辛さがマスクされる。いずれにせよ苦味で塩辛さをごまかすことができる。
 塩の中の苦汁分をマグネシウムで代表させると、煮詰めで作った普通の塩では、精製塩の0%から苦汁を精一杯残した小規模製塩の1%までの幅しかなく、これでは溶解すると苦味は分散してしまって味の差は小さいものになってしまう。更に、他の食材などが入るとますますその差がわからなくなってくる。苦汁分の味が生きる食品とはどういうものか、一般論としていえることは、

1)淡白な食材では差が出る。
 お結び、白身魚、豆腐、生野菜のような他の味が薄いものでは差が出る。ただし、苦汁の入った塩の方を良いとするかどうかは個人の嗜好であり、苦汁分が強くなるとクセがでて嫌がる人も多い。淡白な食材こそ苦汁が比較的少ない淡白な塩が良いという好みのほうが多い。最近、刺身や寿司を塩で出すところが増えてきたが、肴の素材の味を生かすという点では塩は最適だが、よほど良い肴でなければ魚の癖があってとても食べられない。

2)塩が直に口に入る料理では差が出る。
 てんぷらの付け塩のように塩が直に口に入る料理では差が出る。これもどのレベルの苦汁が入ったのが良いかは好みの問題になる。
一方で、煮物、炒め物などでは塩の差はほとんど出てこない。中華、洋食では塩の差がでにくく、実際中国、欧米では苦汁の入った塩を珍重する傾向はなく、苦汁の入った塩を高価に販売するのは世界で日本だけといってよい。
 どんな料理に苦汁の入った塩が合うか、一般論としてはクセの多い食材、例えば青身の魚の振り塩、たて塩、べた塩などでは苦汁の多い塩が合う。ステーキのような素材にうまみが多くクセが少ないものでは精製塩や岩塩のような苦汁分の少ないあっさりした味の塩が生きてくる。白身の魚の振り塩や紙塩のように上品な味にもクセの多い苦汁が多い塩は向かない。
 しかしこれはあくまで一般論である。塩の中の苦汁分は量が少なく閾値(判別できる濃度)が高いために、精神を集中しないと大部分の人は大部分の人は差があることすら分からない。上記のような特徴を感知できる人も少ない。多くはこの塩をこだわって使っていることをアピールして先入観を作らないと分からない。最終的にはこだわりとか好みの領域になることを理解しなくてはならない。結局、味は自分で作るしかない。プロの料理人はもちろん、料理にこるのであれば、結局自分で試してみるしかない。それで自分の味を作ってほしい。誰にでも最高という塩はない。なお、注意していただきたいのは、先入観を持って試食しないことである。必ず名前を伏せて試食すること。塩による差は少ないので先入観で良い悪いは決まってしまう。
3.苦汁の多い塩の種類と使い方
 単純化して味の特徴を整理すると、マグネシウムの多い塩は丸み、甘みが強く、癖の多い塩になる。少ないとさっぱりして癖のない味になる。カリウムは直接舐めると刺激的な味だが、10%以下では料理に使うと刺激的な味が薄まってうまみを増す傾向がある。
 料理に使うときはこれに素材へのなじみの良さ、振り塩などの場合にはこれに分散性を考える必要がある。素材へのなじみのよさは複雑な要素が絡むが、単純化していくと塩の溶ける速度で、結晶の大きさや硬さが大きく関係する。溶けやすい塩は食材へのなじみが早い。振り塩での分散性のよさは水分(苦汁分)と粒子の大きさが大きく関係する。乾燥した塩、中くらい(0.3〜0.6mm)程度の塩が振りやすい。苦汁分が多くてべたついた塩は一度から入りして水分を飛ばしてから適度に砕くと振りやすくなる。
 塩の溶ける速さは、結晶粒子が小さいほど早く、結晶の形はフレーク状になると早くなる。作り方から見ると、低温で炊いた平釜塩(フレーク塩)、高温で炊いた平釜塩(凝集晶塩)、立釜塩(真空式)、降雨が多い地域の天日塩、砂漠地の天日塩、岩塩の順に溶けにくくなる。
味(苦汁分)と食材へのなじみ(溶けやすさ)で代表的な塩のマップを試作してみた。

4.苦汁健康法
 苦汁の主成分はマグネシウムである。マグネシウムは健康上の効果は大きい。マグネシウムの不足は多くの成人病の原因になるし、代謝機構にも重大な影響力を持つ。日本人にはマグネシウム不足がみられ、特にファストフードですます人は顕著である。マグネシウム不足の人に苦汁を与えると驚くような効果を示すことがある。ただし、塩の中のマグネシウムは量が少ないから効果なしと考えて良い。苦汁を工夫して直接摂ることが最近注目されている。
 マグネシウムの成人一人当たりの必要量は一日300mgである。健康的な和食を取っている人は十分な量をとっているはずである。しかし、海藻、豆、玄米、魚などが嫌いでファストフードが多い人は要注意である。その様な人は一日100mg程度苦汁から補給するのも一つの方法である。苦汁には3〜5%のマグネシウムが入っているから、一日2g、小さじ一杯の苦汁は健康法に役立つ。苦汁入りの塩からとるのは塩の量も少なく健康面から見ると補給の意味がない。わかめの味噌汁一杯のほうがはるかに良い。

注)
マグネシウム欠乏症状の例(斎藤昇:マグネシウム-成人病との関係 1995、光生館)
 症状所見の一部:嘔吐、脱力、筋力低下、テタニー、抑うつ、一過性チアノーゼ、黒ずんだ皮膚、無感情、食欲低下、腸管運動低下、落ち着きがない、睡眠障害、など
 臓器別所見の例:心電図異常、心調律異常、高血圧、脳卒中、振戦、筋痙攣、発作、など
 まだ医学的に十分な実証はないのだろうと思いますが、「健康革命をリードするインドネシア産天然にがり」という本には、ガン、高血圧、糖尿病、アトピー性皮膚炎、水虫、肥満、など最近気になる病気にみんな効くようなことも書かれています。もちろんインドネシア産が特に変わった苦汁ということはないはずですが。
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