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塩選びのいろは

塩の表示が変わります
  塩選びのいろは

塩の表示方法も変わって、一括表示以外に製造方法の表示が義務となりました。原材料、原産地、製造工程が書かれるようになったので、新しい表示のどこを見ればよいかの入門編をまとめておきました。
塩選びのいろは(食用塩公正取引協議会:パンフ、このマークがお買い求めの目印です。から転用)

第1のチェックポイントは、塩粒の個性を決める特性で、これで塩そのものがどんな料理にあう塩かがおおよそが決まる。
製造方法の工程に立釜、平釜、採掘のどれが書いてあるかを見る。
立釜は普通の塩で何にでも使えることが特徴で無難。価格も比較的安い。
平釜はほぼ日本だけの特産で溶けやすい塩で材料になじみやすい個性がある塩。
採掘は岩塩や湖塩を掘ってきたままの硬くて溶けにくい、吸湿しない、通常は大粒の塩
第2のチェックポイントは、どのような添加物が入っているかで、一括表記の原材料に書かれている。添加物で塩の特徴は大きく変わります。
第3のチェックポイントは乾燥の有無と見た目の粒の大きさで使い勝手が大きく変わるし、料理への相性が変わってくる。
第4のチェックポイントは、栄養成分表記です。義務表示ではないから書いてないものもあります。注目するのはマグネシウムです。マグネシウムがどこまで食品に影響するかは「にがり」の項の「にがりと塩」の項を見てください。使い勝手、味、健康への影響があります。世間でいうほど大きな影響ではありませんが塩にとって重要な要素です。

以下チェックポイントの簡単な解説
1)立釜、平釜、採掘の見方
立釜または平釜と書かれていれば炊いて作った塩で泥や砂がなくきれいな塩です。
立釜は従来真空式と言っていた蒸発缶です。世界共通の大型釜で大量生産ですから価格が一般に安い。何にでも使えるようにという万能型の塩で無難です。
平釜は溶けやすく、柔らかく、くっつきやすい塩になります。小規模生産が多く価格がやや高くなる場合が多いようです。溶けやすくて柔らかくてくっつき易いということは、例えば、魚の身を締める、漬物をつける、など和食系の料理では具合がいいことも多いようです。
採掘と書いてあるのは岩塩や湖塩で掘ってきた塩です。硬く溶けにくい塩で、よほどすり潰さないと普通の料理には使い難いのですが、塩粒を残す料理にはとても具合のよいものです。岩塩といっても採掘と書いてないものは岩塩の特性はないものと考えてください。

2) 添加物の見方
炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸などは塩が固まるのを防ぎます。振り出し容器に入れられ長期間サラサラです。急ぐ料理に、食卓の塩に、稀にしか塩を使わない人に、など
うま味調味料(グルタミン酸ナトリウムなど)の入った塩は、振り出し容器に入れて使われます。味の素大好きの人に、食卓用に、
粗製海水塩化マグネシウム(にがり)は「にがり」による味の改善、マグネシウムの健康効果を期待したものです。「にがり」の量は栄養成分表示のマグネシウムの量で見てください。「にがり」は特に添加しなくても原材料名:海水と書かれた塩にはたくさんの「にがり」が入ったものがあります。水分が多くべたつきがあるので振り塩など分散させるときは空炒りして使ってください。
塩化カリウムは減塩用と味の改善用です。カリウム量が10%以下なら味の改善用、低ナトリウム塩と書いたものは減塩用と考えてよいでしょう。低ナトリウム塩は味が悪いことが多い、医師と相談して使った方がよい(特に腎臓疾患がある場合)。
食品、ハーブ類は適切な配合であれば料理が生きる。手間がかからない。など重宝するが、料理に合わなければまずくなるだけ。表示規約の対象外

3) 乾燥、粒径
乾燥してあればサラサラ性が非常によくなる。湿った塩、「にがり」の入った塩(マグネシウムが多い塩)は流動性が悪い。またにがり分が多い、マグネシウムが多い塩は湿気を吸いやすくすぐベトベトになる。
大粒は溶けにくい、固まらない、サラサラして分散性がよい、
微粒はくっつきやすい、溶けやすい、サラサラ性が悪い、固まりやすいなどの特徴がある。
サラサラ性がよいということは、振り塩がしやすい、計量しやすい、運びやすい、などで、塩を固体で使うときは基本は振り塩になる。計量しやすい運びやすいは量的にある程度の量を使うときには絶対有利、
微粒の特徴である溶けやすさ、くっつきやすさは、大きな特徴で、これでなければならない料理も数多い。

4) 栄養成分表記
マグネシウムに注意しよう。マグネシウムが多いと、湿気を吸いやすいから湿気のある所におかない、蓋をしっかりする、振り塩には空炒りをしてから、などの注意が必要。
味への影響は、「にがり」による味の差は微妙で淡いものですから、素材が淡白なものでは「にがり」による味の差がわかりやすくなりますが、料理に塩以外の味が入ればわからなくなります。塩表面にごく薄く湿った形で付いているだけですから、攪拌したり溶かしたりすれば「にがり」の味は分散してしまいますます淡いものになって分からなくなります。すなわち、素材が淡白で他に味がなく、使い方もかき混ぜたりしないでそっと添える形ならば生きてきますが、通常の料理ではほとんど効果がわかりません。

  健康への効果ですが、健康上の効果は主としてマグネシウムによる効果が主張されています。マグネシウムの必要摂取量は成人男子1日300mgとされており、人体に必須の無機物質として重要な栄養素とされています。マグネシウムは日本人にやや不足気味という報告もあったのですが最近は通常の食事をしていれば不足はないとする報告が多いようです。塩は家庭用で使う量が少ないので、塩から摂取する量はほとんど問題にならないでしょう。塩でもっともにがり分が多い塩で3%含有しています。通常は多くても1%以下です。塩の摂取量1日10gその中で家庭用の塩から取る量を1g程度とすればマグネシウムは10mgにしかなりません。通常他の食材から取るマグネシウム量の方が圧倒的に多いのです。それでも、食生活のバランスを考えると塩の中のマグネシウムは重要と考えるべきかもしれません。意見が分かれるところです。

  なお、にがり分が多い塩は湿った感じの塩になるため、調理上は使いにくい塩になります。振り塩などでは使う前に空炒りして水分を飛ばすなど手間のかかる操作を必要とする点で、どうしても使用は制限されます。価格もにがりが多い塩の方が高くなる傾向があります。私の個人的意見としては、「にがり」が多い塩その特性をよく考えて使わないと特徴は死んでしまう。あまり大きな期待をもってはダメ、料理のプロにとっては研究して使ってみる価値がある塩、簡便な使い方をするには使いにくい塩であることを承知しておくことが大切と思います。

塩の表示が変わります

食用塩公正競争規約は平成20年4月21日に官報に告示されて食用塩の表示規約が施行されることになりました。平成20年5月21日には食用塩公正取引協議会が発足して具体的活動に入りました。平成22年4月までには新しい表示基準に従って表示しなければなりません。規約の内容は「食用塩公正取引協議会」のホームページhttp://www.salt-fair.jpを見てください。ここでは食用塩公正取引協議会のホームページに書かれてない解説、裏話、などを紹介します。なお、新しい表示法では塩の製造方法が表示されますが、消費者はこの新しい情報提供をどのように利用すればよいのか塩の種類と特徴に著者の意見を書いています。

1.なぜ表示の規約ができたのか
 成立の経緯は食用塩公正取引協議会ホームページ“経緯”に書かれています。塩業界の皆様に大変お世話になりながら成立したものです。最初は業界団体もない中で成立することは困難といわれてきました。しかし業界の皆様の協力で優れた規約になったと思います。食用塩公正競争規約は他の食品の基準に比較して、部分的にはかなり厳しい規約になっていると思っています。例えば、伯方の塩や赤穂の天塩のような地名が入った商品で原料塩を輸入している場合は原料の塩が他国からの輸入であることが商品名と同じ面に記載されることになり、今まであまり例のない思い切ったルールになっています。これは伯方の塩、赤穂天塩が誤解を受ける表示はしないという強い信念から生まれたものです。自然、天然の用語を安易に使ってはならないということが消費者からは強く要望され、その規制は塩に限らず他の食品でも厳しく扱われています。これは塩に限らず食品の表示で自然、天然という言葉を使うことであたかも健康に良いとかおいしいというイメージで宣伝にも使ってきて、消費者に定義のはっきりしない言葉を使ってあたかもよい品質、価値ある品質と思わせるいわゆる思わせぶりな表示の代表と考えられたためであろうと思います。今まで自由に使っていた自然塩とかミネラルたっぷりの表現をやめることを同意したのも思い切った決断でした。
塩の商売は人間が生きていくためにどうしても必要なものを供給していくという社会的責任を担っています。その点で他の商品と違うという自覚と誇りを持ってこの規約の実施に各社とも協力してきました。目先のイメージをあげてたくさん売りたい、高価に売りたいという気持ちを抑えて、消費者に客観的な情報を提供して顧客に満足していただくことが、塩という単純かつ必須の商品の信頼を向上するものと信じています。
正しい表示の実現には、業界だけでなく消費者が正しい表示を進める原動力になっていただくことが第一です。うそつき表示や誇大宣伝の表示を消費者の力で市場から締め出すことが正しい表示の実現の最大の力になります。また、おかしいなという表示があれば積極的に食用塩公正取引協議会とか消費者センターなどに意見を頂いて是正していくことが大切だと考えています。

2.表示に関する私の想い
(1)  塩の表示で消費者を欺かない表示にしたいというのが私の基本的考えでしたが、業界意見をまとめるのに5年もかかってしまいました。規約が成立し協議会が発足して一歩前進できたと喜んでいます。私はウソのない表示が消費者の信頼をかちとる第一歩であり、消費者の信頼を得てこそ業界の発展があると考えてきました。この考え方に多くの人が賛同していただいたと考えています。
(2)  総論は賛成だけれどそんなきれいごとで商売はできないと考えている人もたくさんいます。ミネラルたっぷり、自然の香り豊かな自然塩、と宣伝して販売促進を計りたい人もいます。買い手に口八丁手八丁で良いイメージを与えて高く買っていただくのが商売で、科学者の研究論文のように誤解がないように正真正銘の説明をするのは商売の道を外れてるのと違うか。商品にまるで夢がなくなってしもうて商売の面白さも何もなくなってしまう。という意見もあります。
(3)  しかし私は塩だからこそ生真面目にやらなきゃならんと思っています。化粧品やファッション商品のような夢を売る商品とは違い、人が生きていく上で毎日必ず取らなければならない食品を扱っているのですから、社会的責任があると考えます。もちろん夢があってよいのですが毎日使う生活必需品でだまされたと思うような商品があってはいけないと思うのです。
(4)  世間では何とか消費者をその気にさせて買わせようという連想ゲーム的思わせぶり表示が横行しており、明確な事実についてのウソさえいわなければ、消費者をだましの商法に乗せるのが商売の極意と言わんばかりで、塩だけに商業道徳を説いても仕方ないことかなという無力感があります。社会全体が法律上の犯罪でなければウソをついても罰せられない社会、子供の時からウソをついたらお尻を叩かれることもない教育、周りの大人たちが平気でうそをついてうまい汁を吸っているのを見習う教育、から生まれたことではないかと思います。せめて塩屋さんだけはそんな社会に見切りをつけて正直者の社会を作りたい。

3.新しい表示の見方
 規約の中で新たに記載が義務付けられた製造工程の記載内容を見るときの参考になるコメントを記載します。このような原料、工程などを組み合わせた代表的方法の特徴を「塩の種類と特徴」に記載してあるから参考にしてください。
(1)  原材料名
 海水、海塩、天日塩、岩塩、湖塩の5種類があります。日本で製造された塩(国産塩)は海水を原料としています。海塩を原料とするのは、国産のイオン膜立釜方式あるいは天日塩を原料としています。天日塩、岩塩、湖塩は外国産です。海水、海塩、天日塩は海水を原料としており、にがりを含む可能性があります。ただし、製品を十分脱水したり、洗浄したり、あるいは溶解した後立釜や平釜で再度結晶させたものはにがり分が少ないものもあります。岩塩の場合はほとんどにがり分(マグネシウム)はないと考えてよいでしょう。ただし、稀にマグネシウムを含む岩塩があります。
(2)  原産国名
 原産国名では塩の品質はわかりません。ただし、外国産の塩はほぼ無検査で国内に入ってくるので品質については消費者責任と考えてください。国内の塩では、工程がイオン膜+立釜の塩はは検査を受けています。それ以外の国内の製塩または塩加工は食品衛生法に基づいて保健所等の工場の衛生上の検査があります。塩以外で食品衛生上のトラブルが続いている国もありますが、国によって衛生観念や品質に関する感覚が日本とは大きく異なる国があるのも事実です。食品衛生上の判断をする場合に原産国表示は一つの参考になるでしょう。なお、現時点では塩について衛生上のトラブルは発生しておりません。
(3)  工程
3-1) 濃縮
 
イオン膜:食用塩の80%がイオン膜で濃縮している。生産性が高く大規模生産。海水汚染の影響が少ない。安全管理体制が整備されている。硫酸塩がほとんどない。色はほぼ無色である。イオン膜を使うことによる味への影響はほとんどない。
  逆浸透膜:海水淡水化の副産物として得られるものと塩用に小規模の海水濃縮装置として使う場合がある。天日濃縮と組成はほとんど変わらない。
  天日:国内で行われるのはネット式、枝条架など液滴蒸発による小規模濃縮。昭和36年まで使われた入浜塩田および昭和27年から昭和47年まで使われた流下式塩田はいずれも展示用の復元塩田として残るだけである。天日濃縮の場合多くは黄色に着色している。着色の原因は粘土、各種植物のフミン酸、フルボ酸、植物色素などといわれている。
塩にした場合、濃縮方法(イオン膜、天日など)による製品特性(味、物性など)はほとんど差がない。
3-2) 結晶化
  天日(天日塩田):外国の天日塩田で海水を蒸発濃縮して結晶させる。砂漠の塩田(メキシコ、オーストラリア)では1〜2年かけて塩を作る。硬く大きな結晶で、これを粉砕して使う。調理上は素材とのなじみがやや悪いので使いにくい。乾季作業の塩田(ベトナム、中国)半年で塩を作る。砂漠の製塩に比較して結晶が小さく柔らかである。砂や泥が入りやすい。食用として販売する際は、使いやすい大きさに粉砕して洗浄する。溶解して再度釜で煮詰めて結晶させる。などの方法できれいにし、使いやすいように調整する操作が行われる場合が多い。日本国内でごく少量天日塩が作られている。通常はビニールハウス内などで結晶盤を置いて蒸発させて作られている。
  平釜:大気圧の釜で製造する。小規模生産に使う。結晶が小さく柔らかで調理では溶けやすく素材とのなじみがよい。結晶の形が小さいサイコロ状の結晶が凝集したもの(凝集晶)あるいはやや大きなピラミッド型の薄片結晶(フレーク塩、トレミー)となる。
  立釜:真空式で大きな釜で大規模生産する標準塩。日本の食用塩の大部分が作られる。煮詰め釜として世界の標準形式である。サイコロ型の結晶で通常0.3〜0.4mmの結晶ができるが、育晶用の釜があれば1mm以上の結晶もできる。日本の食用塩の半分以上を占める塩事業センターの「食塩」はこの方式の釜で作られる。
  噴霧乾燥および加熱ドラム:海水を小液滴として全部塩にする。微粉で使いにくいがにがり分が多く独特の味がある。
  採掘:岩塩を掘り出したもの。適当に粉砕してあり、ミルなどで使う。溶けにくく、一般的調理には使いにくいが、溶け難さを生かした料理で特異な使い方で生かされる。
3-3) 加工
  乾燥:塩を加熱して乾燥する。さらさらになり分散性がよい。振り塩に都合がよい。
  粉砕:天日塩、岩塩など大きな塩を砕いて使いやすくする。
  焼成:焼いて固まりにくくする。味も少し変わる。高温で焼いた場合は溶かした時に少し濁ることがある。低温で焼いた場合は結晶が崩れていない。高温では結晶内の気体の泡や液体の泡が破裂して粒が小さくなる。
  混合:2種類の塩を混ぜたり、添加物を混ぜたりする操作、混合物によって塩の特徴が変る。混合物としては、にがり、塩化カリウム、鉄塩、固結防止用炭酸マグネシウム、各種食品香辛料(食用塩公正競争規約対象外)などがある。
  洗浄:天日塩、岩塩などで塩が汚れている時に洗う。
  造粒:顆粒状やタブレットなど粒の形を変えて使いやすくする。例えば、微粉の塩を顆粒状に固めて調理用などに使いやすくする。舐められるように大きくした錠剤にして汗をかく労働や運動をするときの塩分補給用に使う。

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