自然塩、天然塩という名前は食用塩公正競争規約(平成20年4月)で禁止されました。平成22年4月からは猶予期間がなくなり自然塩、天然塩の言葉を商品表示や商品の宣伝に使うことはできません。なぜでしょうか。
日本では天然塩はあまり使われませんが、自然塩や自然海塩の言葉が広く使われてきています。自然塩はどのような作り方の塩とかどのような特徴がある塩とかの定義はありません。もともと自然にできた塩、天然に存在する塩は岩塩や湖塩を採掘したものしかありません。これは外国から輸入しているもので日本にはありません。しかし、自然塩と書くことであたかも健康によい塩、おいしい塩という宣伝が行われてきました。それを信じる人がいて、ほかの塩の10倍以上の値段をつけて販売されることが多いようです。そんな塩でも使ってみると消費者にはその差がほとんどわかりません。冷静な消費者はこれは虚偽表示か誇大宣伝だと思ったのです。消費者によいものだと見せかけて高価に売りつけることは優良誤認の表示として法律で禁止されています。消費者団体から消費者をだます表示は止めてくださいという訴えがあって公正取引協議会や東京都から公正競争規約を作って禁止すべきだと勧告されたのです。
海水から作った塩にはすべてにがりが含まれています。ナトリウム以外のミネラルは最も多いものがマグネシウムですが、通常1%以下、海水全部蒸発する塩(ぬちまーす、雪塩など)は特別な製法で特に多くマグネシウムを3%も含んでいます。しかし普通は多くてマグネシウム1%以下、ほとんど0.5%以下です。しかも、塩は1日10gしか摂らないしその大部分は醤油、味噌など調味料やできあがった食品からなので、家庭で使う塩から健康に意味があるほど摂ることはまずないと考えられますから、自然塩と言って売っている塩が「にがり」を少し多く残したとしても、健康に効果があるほど塩からナトリウム以外のミネラルがとれるとは考えられません。そのため健康によいという表示は禁止されています。 味についてはその感じ方に個人差があることなので食用塩公正競争規約では表現は自由になっています。しかし、自然海塩と表記しているからおいしいと言うことはありません。多くの消費者が自然海塩と表記することを拒否したのは、味としてもそれほどの差があるとは認めなかったからです。料理の塩味は塩加減が9部使い方で1部、塩の種類で変わるのはそれ以後の話です。特別な料理人で特別な料理で自然塩と表記する塩が特においしいということがあるかもしれませんが、普通に家庭で使う料理で魔法の塩はあるとは認められなかったのです。
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