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塩の性質 塩の性質
塩はどれだけ水に溶けるか

塩の固結

食塩中の臭素
食塩中の臭素
 
Q 最近、塩の中の臭素(無機臭化物イオン)は体に悪い、岩塩や天日塩を溶解再製した精製塩などを使う方が健康に良いという説明を聞きました。本当でしょうか。
 
A1 臭素は食品として無害です
 海水中の臭素は無機臭化物イオンとして存在します。無機臭化物イオンは健康上全く無害です。結論として、塩の中の臭化物の多いか少ないかは、健康上も食品加工上も何の問題もありません。これに関して少し補足説明をしておきます。
A2 臭素の摂取許容量は
 海水には3.45%の塩分があり、食塩(塩化ナトリウムとして)2.67%が含まれます。塩素としては1.9%(19,000ppm)、臭素としては65ppmを含んでおりその組成比は世界中変わりません。臭素は塩素の約1/300(0.3%)の比率で入っているのが自然な形です。海水中の臭素は臭化物イオンBr-として存在し、食品として完全に安全なものと考えられてきました。WHO(世界保健機構)で1日の許容摂取量は1mg/kg、すなわち体重50kgの人で50mgとされていますが、臭素500ppmの塩を1日10g摂ったとして許容量の1/10にしかなりません。
A3 塩の中の臭素量は
 海水中の臭化物(無機臭化物)は、食塩の主成分である塩化物と同じ性質を持っているので、体の中でも塩化物とほぼ同じ働きを持つと考えられています。塩の主成分である塩化物が体にとって必要な元素で有害性がないのですから、塩素と同じ行動をする臭素も同じように有害な性質は持っていないのです。体の中には海水と同じように臭素も入っており、血液中の臭素は約4.6mg/L、塩素は3550mg/Lで、臭素/塩素比は0.12%であり、膜濃縮煎ごう塩(食塩、並塩)と同じ水準なのです。血液組成比と同じということは食物として最も自然な形といえるのではないでしょうか。
 海水から塩を作る過程で臭素の大部分が苦汁に移行して塩の中の臭素/塩素比は小さくなります。塩の中の臭素/塩素の比は製塩の方法によって表のように少し変わりますが、海水より小さくなることに変わりはありません。私たちは昆布のように臭素が非常に多い食品を健康食品として食べているのです。
品名 臭素含有量% 臭素/塩素比%
食塩、並塩 0.038〜0.12 0.06〜0.2
白塩 0.038〜0.069 0.06〜0.11
精製塩 0.0025〜0.0083 0.004〜0.01
天日塩 0.01〜0.04 0.016〜0.06
岩塩 0.002〜0.012 0.003〜0.02
海水 0.0065 0.3
血液 0.00046 0.12
昆布 0.0865 2.6
A4 塩の中の臭素がしょう油で問題になったと聞いていますが
 臭素が過去に安全上の問題になったのは、しょう油の中の臭化物です。これは大豆を臭化メチルで薫蒸して殺虫をしたときに残る残留農薬としての有機臭化物です。これを塩の中の無機臭化物と混同して、臭素が少ない方がよいという話になったことがあります。これは食塩と有害な塩素ガスやダイオキシンを混同したようなものです。臭素という元素が悪いのではありません。臭素がどんな形で存在しているかで体に良い悪いが決まるのです。塩の中の無機臭化物が体に悪い影響があるなどという宣伝があるとすれば、およそ常識はずれの話であり、ウソをついて売り込みをしているわけですから、よほど注意しないとだまされる心配があります。
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