トップページへ 塩の情報室 目次
塩の種類と特徴
製法と原料による塩の分類

「あらしお」の話
(2010記載)


「フレーク塩」の話
(2010記載)


「焼塩」の話
(2010記載)


「藻塩」の話

「自然塩」の話
(2010記載)


「ミネラル塩」の話
(2010記載)

「化学塩」の話
(2010記載)


市販の塩の種類

「あらしお」の話
(旧原稿)


自然塩の話
(旧原稿)


岩塩の話

天日塩の話

生活用塩とは

深層海水塩

塩の添加物
「ミネラル塩」の話(2010記載)

 「にがり」分が多い塩をミネラル塩として販売することが行われたことがあります。ミネラルの科学的定義は明確ではないのですが、厚労省の基準では、生理的に有益な無機成分で、亜鉛Zn,カリウムK,カルシウムCa,クロムCr,セレンSe,鉄Fe,銅Cu,ナトリウムNa,マグネシウムMg、マンガンMn,ヨウ素I,リンP、の12元素が指定されている。本来のミネラルの定義は鉱物質全体を表す言葉なのでしばしば混同されるが、ここでは厚労省の定義に従う。

 塩でミネラル豊富という表現を使った場合、すべてのミネラルが摂取できるかのような誤解を生ずるため使用できなくなった。食品の中のミネラルは通常1〜2種類が有益な水準で含まれているもので、この塩を使えばすべてのミネラルが健康上必要な水準で摂ることができるように誤認される表示は好ましくない。従来塩製品でミネラル豊富と称していた製品は「にがり」含有という言葉の代わりに語感の良いミネラル含有と書いていたのが実態であった。食用塩公正競争規約ができて食品衛生法準拠の表示をすることになっており、個別の成分で表示することができる。例えば、塩100g中にマグネシウム38mg以上であれば、マグネシウム含有と記載できるようになった。なお、食品衛生法に定めるマグネシウム豊富の表現は一般的に塩の摂取量が通常食品に比べて極めて少ないため使用しないことになっている。また理由としては塩の主成分であるナトリウムがミネラルであることもミネラル豊富表示ができない補足的理由である。

 塩のマグネシウム含有量は市販塩で添加物がない場合3%が最大で、通常にがりを適度に含有しているとして販売される塩の大部分は0.5%以下である。これを健康上有益とするか否かは速断できないが、小売塩から摂取する塩の量は1g/日程度と推定されており、その中で摂取できるマグネシウムは塩中のマグネシウムが0.5%とすれば5mg/日で、厚労省の定める栄養摂取基準300mg/日に比べてあまりにも小さいため、健康上有益と評価できるようなマグネシウム量には遠く及ばない。マグネシウム摂取の統計値*を見ても、大部分が穀類、芋、魚、海藻などが多く、塩がミネラル(マグネシウム)の供給に大きな役割をもつとは考えにくいし、マグネシウム以外ではさらに少なくなるからマグネシウム以外のミネラル栄養源としての役割はさらに少なくなるでしょう。
*:木村美恵子:“マグネシウム、成人病との関係”(1995、光生館)

 栄養のバランスは食事全体のバランスを考えなければなりません。ご飯、野菜、肉、魚、海藻、豆類など多くの食材をバランスよく食べることが大切です。個別の食材に栄養バランスをとることは人間にはできない相談です。ご飯、野菜、塩・・・すべてに食としての役割があり、それを上手に組み合わせてとることで食事のバランスがとれるものです。まして、塩という調味料にミネラルバランスを求めることで、あたかも栄養バランスがとれたような錯覚を与えることは消費者に誤った情報を与えることです。局所的に塩だけのミネラルバランスを考えるのではなく、好き嫌いなく多くの食材をまんべんなくとることで健康な生活をするように心がけましょう。

 「にがり」が味に及ぼす効果については様々な意見がある。まず、塩は食べるものではなく、他の食材の味付けに使うものだから、主となる食材の味に左右されて微妙な差はわからない、「にがり」は結晶表面に付着しているもので舐めれば差が分かるが料理に分散すると分からない、口中に入った時は1%以下でなければ塩から味が強くて適度な味覚情報にはならないので非常に薄まった状態で味効果を見るため明確に分からない。等の問題があり明確ではない。しかし、食品製造業などで塩の種類を変えると微妙に味が変わるもので、良い悪いは一律にいえないが「にがり」が味を微妙に変えることは明らかである。
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